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第30話 麗華の証言(2)

Author: G3M
last update Last Updated: 2025-12-06 14:48:42

「それから、お兄さんが熱を出して倒れたんです。寒い冬の夜に体が冷えたらしくて」と麗華。

「範経は体が弱いからな。ストレスがかかると風邪をひきやすくなる」と祥子。

「お兄さんが学校を休むことになったので、私も学校を休んで看病することにしました。クローゼットは玄関のそばで寒いの。そんな場所で寝てたら風邪が治らない。だから昼間はこっそり私のベットに寝かせてあげたんです」と麗華。

「もう、聞いていられない……」と由紀。

「わたしが助けに行くべきだったわ」と祥子。

「それで、私、チャンスだと思ったんです。お嫁さんになる……」と麗華。

「え、まさか! お嫁さんになるってどういう意味なの?」と美登里。

「その、二人で裸で……。言えません……」と麗華。

「セックスのこと?」と美登里。

「はい」と麗華。

「それでうまくいったのかしら?」と美登里。

「いいえ。お兄さんがそれはダメだって。お前のためにならないってお兄さんが泣いたから……」と麗華。

「ふーん。それはありうる展開ね。それであきらめたの?」と美登里。

「はい、そのときは。本当に好きだって言ってくれたので」と麗華。

「両親は何も気が付かなかったのかしら?」と美登里。

「だいたい分かっていたようです。それでお兄さんを追い出す相談をしていました。でも両親は帰りが遅いので、週末以外にはあまりゆっくり話をする時間がないようでした。週末は真由美叔母さんがお兄さんを外に連れ出してました」と麗華。

「範経が殴られてかわいそうだったんだ。風邪で寝込んでたこともあったし」と真由美。

「その話は後にしましょう。それで風邪は治ったの?」と美登里。

「年末になっても治りませんでした。お父さんとお母さんが年末の休みで家にいて、体調の良くないお兄さんに大掃除を手伝わせて、お兄さんが倒れたんです。それから、それから……」と麗華。

「泣かなくてもいいのよ。みんな麗華ちゃんの味方だから。麗華ちゃん、安心して」と美登里。

「それから、お兄さんがいつの間にかいなくなって、わたしは家の外を探し回って、どこにもいないから交番のおまわりさんにお願いしたんです。お兄ちゃんを探してくださいって……」と麗華。

「範経は見つかったの?」と美登里。

「正月にお巡りさんに連れられて帰ってきました」と麗華。

「高校の校舎で寝てたんだ。捜査願いが出てたらしくて、元旦に部屋着で街をうろつ
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